一人旅の良さ
明治生まれの祖母は、町内の「婦人会」経由で世界中を旅行していた。
とはいえ、うちはぜんぜん裕福な家ではない。古い衣服を大切に着ていたし、貯金も遺さず亡くなった。お看取りする側は大変なのだけれど、自分のお金を娯楽に遣い切るのもいいものだなと思う。楽しい人生だよね。
旅費は「婦人会」のお友達と一緒に積み立てをしていたはず。あと、バブルな時期だったのだろう。今思えば羨ましい限りです。
オーストラリア、カナダ、ハワイ、、渡航先は全然知らないけれど、あちこちに旅行しては、お土産を買ってきてくれていた。硬いスーツケースがかっこよかったし、交通社のロゴが入ったネームタグの質感も覚えている。
「外国の浜辺で浴衣を着たら注目された」なんていう逸話も面白かった。写真を頼まれたと言っていたなあ。携帯もスマホもない時代。
なので、子どものころの私は、人は皆、年を取ったら世界旅行できるのだと思っていた。全然そんなことないんだけどね。いい夢を見させてもらった。ありがとう、おばあちゃん。
こうやって思い出していて気付いたけど、そう言えば祖母は一人旅には行ったことないと思う。
食事も一人でお店には入らなかった。私と外食するのは楽しそうだったけれど「一人ではうどん屋さんもよう入らん」と言っていた。
どうして苦手だったのか、聞いたことはあるけれど忘れてしまったなあ。映画館はよく行っていたけれど、一人旅はなぜ行かなかったんだろう。単に積立金がなかっただけか、それとも、そんな時代じゃなかったのかな。
私は一人旅が好き。去年はあえて遠方のライブチケットを買って、ライブ遠征にかこつけて知らない場所に行った。今年はライブ抜きで行こうかなと思ってる。どこに行こうかな。
旅と関係ないけど、「かこつける」という言い回しや響き、けっこう好き。ググってみたら「託(かこつ)ける」と書くんですね。へえー。
「来客にかこつけて酒を飲む」という例文が出てきた。いたずら者がちょっとした得をして、えへへって笑ってる感じじゃない? かわいい。
旅先で一人、喫茶店に入ったり、駅前の商店街を歩いたり。一人旅のそういう、何にも縛られない、どうでもいい時間が好き。
もちろん、神社仏閣や名所旧跡、食べ物や地酒との出会いもいいのだけど、
「かこつける」みたいな言葉をふと思い付いてググったり、手帳に落書きをしたり、こうやってブログにメモしたり、、という、
無意味でなにげない時間を旅先で持つのがいい。とても自由。
そして、「さあ家に帰ろう」と思う心持ちもとても好き。一人旅、いいよね。